「文久永宝」に価値はある?種類や母銭、買取価格を解説!
こんなに小さいのに、かなり高額ですね!
そうですね、ただ”価値が高いもの”と”価値が低いもの”の差が大きな古銭ですので、今回はどういった文久永宝が高額買取になるのか解説していきます!
そもそも「文久永宝」ってどんな古銭なの?意外すぎる事実にびっくり!
みなさんは文久永宝と聞いてどのような銭貨なのか容易にイメージできるでしょうか。
知名度の高い「和同開珎」や「永楽通宝」などと違い、一般の方にはあまりメジャーな存在ではないかもしれません。
そこで、はじめは文久永宝がどのような背景を持って生まれ、どのような運命をたどったのかを簡単にご紹介します。
「文久永宝」は銅相場の高騰と鉄貨の不評から生まれた
これは今からざっと160年ほど前のことで、比較的最近のことであるともいえます。歴史の教科書に出てくる「ペリー来航」の少し後ぐらいのことでした。
画像:Wikipedia
幕末期に文久永宝が生まれた背景には、大きく2つの要素が関係しているとされます。
1つめは銅相場が大幅に値上がりしたことで、改鋳の必要性が生じたことです。
2つめに、当時流通していた鉄銭の評判があまりにも悪かったことが挙げられます。
度重なる銅相場の高騰による改鋳の必要性
江戸時代の1768年(明和5年)、棹銅(棒状に吹きたてられた銅)100斤の価値は銀151匁に相当していました。ところが1862年(文久2年)に入ると相場は明和期の2倍以上にまで跳ね上がります。これは、約100年間で銅相場が2倍に高騰したことに他なりません。
画像:大阪市立博物館
そこで、主力通貨の寛永通宝よりも軽量化の文久永宝を発行する必要性が生じたわけです。
窮余の策で発行した鉄銭があまりの悪評判
江戸時代の主力輸出品であった銀も後期にはめっきりと産出量が減り、代わりに銅が輸出されるようになりました。
すると、銭貨に必要な銅の調達にも苦慮するようになります。そこで、白羽の矢が当たったのが鉄を素材とした”寛永通宝”です。
そうした経緯で誕生したのが文久永宝でした。
これらの理由により幕府は文久永宝の発行に踏み切ったわけですが、時は幕末。明治維新がすぐそこに迫っており、通貨として実際に活躍した期間はさほど長くありませんでした。
「文久永宝」の当時の価値はわずか数年で何度か変化した?
文久永宝が通用されはじめてから、わずか数年の間にその価値がさまざま変化しました。
これは、いったいどういうことなのでしょうか。
文久永宝は4文銭として誕生した
そもそも文久永宝は4文銭として通用されるべく誕生したものです。ところが、先に流通していた鉄1文銭の人気がすこぶる悪く、一般庶民の間では差別的な扱いを受けていました。
つまり、鉄1文銭を4枚揃えても銅や真鍮製の4文銭とは交換されなかったのです。
慶応元年には8文の価値に
前項で述べたような差別的な運用を幕府もいよいよ追認せざるをえなくなり、鉄1文銭に対して文久永宝は8文の価値があると定めました。
ところが、これでも市場は収まらず、幕府は自然相場とすることに決めます。
最終的には15~16文の価値に
慶応3年(1867年)にはとうとう鉄1文銭に対して、文久永宝は15〜16文相当の価値があるとして取引されるようになります。
つまり、通用が始まってわずか数年の間に価値が4倍にまで高まった計算です。江戸幕府末期の迷走ぶりを表しているといえるでしょう。
「文久永宝」は驚くことに昭和の戦後期まで使用できた!
みなさんは、文久永宝が昭和の一時期まで使用できたと聞いたらビックリしませんか?
銭貨が流通していたのは江戸時代で、せいぜい使えたのも明治時代ぐらいまで。そんなイメージを持っているかもしれませんね。
とはいえ、これはあくまでも法律上で認められていただけの話。本当に貨幣として使っている人がいたのかと問われれば、さすがに疑問符をつけざるをえません。
というのも、いわゆる小額通貨整理法が制定されたときにはすでに銭や厘という1円未満の通貨で決済する機会はほぼゼロに等しかったからです。
つまり、文久永宝は制度上使えたが、実際に使っている人はいなかったというのが真相でしょう。
「文久永宝」の種類と買取価格はどれくらい?3種類+派生形もご紹介!
おなじ文久永宝といっても、刻まれた文字などにより種類はさまざま。もちろん、それにより価値(=買取価格)も変動します。
ここでは、真文・草文・宝文の基本3種類と試鋳銭について、それぞれの特徴をご紹介していきます。
なお、買取価格については後ほど買取実績を通して具体的に提示しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.真文(しんぶん)
ちなみに、真文の元となった文字を書いたのは、肥前唐津藩主で幕府では老中格だった小笠原長行(ながみち)です。
これから紹介していく各特徴に当てはまらない場合には現存枚数も多いため、ほとんど価値はありません。
1-1.真文深字(しんぶんふかじ)
真文の中でも谷が深く、丁寧に彫られてあるものを深字と呼びます。また、それぞれの文字が平均的に太字であることも特徴のひとつです。”真文”の文久永宝よりは少しだけ希少価値は高まります。
1-2.真文深字降久(しんぶんふかじこうきゅう)
真文深字の中でも銭文の「久」の字が低い位置にあるものを降久と呼びます。また、内郭から離れ両足が外輪に付いている点にもご注目ください。文久永宝のなかでもかなり珍しい種類のものです。希少価値はかなり高い文久永宝といえます。
1-3.真文深字広永(しんぶんふかじこうえい)
真文深字の中でも銭文の「永」の字が幅広のものを広永と呼びます。特に三画目の「フ」の部分が内郭(=中央の穴の縁)と接している点が大きな特徴です。こちらもなかなか数多くの現存が確認されているため、高い価値が付けられることは少ないです。
1-4.真文直永(しんぶんちょくえい)
つまり、他の真文では縦画がややカーブを描いているのが通常なのです。これまで紹介してきた文久永宝のなかでいえば、買取相場の傾向としては”深字” < “直永” < “降久”の順番で価値が高くなります。
2.草文(そうぶん)
草文では、文久永宝の文字に草書体が用いられています。具体的には「文」の字に注目してみてください。ここが「文」ではなく「攵」という形をしていれば、草文であると判断してもいいでしょう。
3.宝文(ほうぶん)
つまり、略字をあてたわけですね。そんなわけで、宝文を略宝と呼ぶこともしばしばあります。こちらはそれほど価値が付けられるものではありません。
4.その他(試鋳銭)
真文・草文・宝文の他にも、文久永宝には試鋳銭と呼ばれる種類のものがあります。
これは、本格的な量産体制に入る前に「お試し」として鋳造されたものです。それだけに現存数は限られており、貴重なものだといえます。
4-1.文久永宝無背(むはい)
実際に流通させていた真文などの銭貨であれば、裏面に「波」と呼ばれる文様があるはずです。ある意味いちばん分かりやすい特徴をもっているといえるでしょう。めったにお目にかかれないほど価値が高い古銭です。
4-2.文久永宝背21波
通常の文久永宝ならば波の数は11しかありませんので、ここで見分けが付くはずです。流通数は非常に少ないので、大変価値のあるものといえます。
4-3.文久永宝五十
五十とは、裏面に五十の文字が刻まれた試鋳銭のことをいいます。その代わりに、通常タイプには描かれているはずの波の文様は描かれていません。
幕府が50文の価値を持つ文久永宝を発行しようとしたのではという説もあります。
4-4.文久永宝當百
文久永宝の試鋳銭の中でも裏面に「當百」の文字が刻まれているものがあります。先ほど紹介した「五十」と同じく、幕府は1枚で100銭の価値を持つ銭貨を発行しようとしたのかもしれません。
いずれにしても試鋳銭の域を出ないまま、江戸幕府は終焉を迎えます。
4-5.文久永宝 母銭
「母銭」というのは、銭貨を製造する際に用いられた原型となるものです。
その後大量に鋳造される銭貨のデザインや文字、紋様の基準となるもので、鋳造される銭貨の品質を保証するための「マスター銭」とも言えるものになります。
文久永宝の買取実績一覧
文久永宝の買取実績を公開していきます。お手元にある文久永宝の価値、売却の際の買取価格の参考にしてください。
文久永宝の種類/買取価格/買取日 | ||
真文 | 重さでの買取:1gあたり3.5円 | 2024/04/07 |
真文深字 | 重さでの買取:1gあたり3.5円 | 2024/03/21 |
真文深字降久 | 1,500円 | 2023/03/03 |
真文深字広永 | 重さでの買取:1gあたり3.5円 | 2023/10/01 |
真文深字直永 | 4,000円 | 2022/06/07 |
草文 | 重さでの買取:1gあたり3.5円 | 2022/05/29 |
宝文 | 重さでの買取:1gあたり3.5円 | 2022/05/29 |
母銭 | 5,000円 | 2022/7/20 |
文久永宝無背 | 18,000円 | 2021/12/16 |
文久永宝背21波 | 250,000円 | 2021/12/16 |
文久永宝五十 | 実績なし(30~60万前後か) | ーーー |
文久永宝當百 | 260,000円 | 2021/05/02 |
「文久永宝」の他にも価値のある江戸時代の銭貨はあるの?
江戸時代には文久永宝の他にもさまざまな銭貨が鋳造されてきました。
もし、みなさんの中で以下の銭貨をお持ちの方は、一度本当の価値がどれぐらいあるのか調べてみるといいでしょう。中には驚くほど高価値のものが含まれている場合も考えられます。
それぞれの買取価格については、このセクションの最後に買取実績一覧表のかたちでまとめてありますので、ぜひ参考にしてみてください。
①慶長通宝(けいちょうつうほう)
こちらは、現存している枚数が次に紹介する元和通宝と同様にさほど多くありません。そんなこともあり、寛永通宝を本格的に鋳造する前の「予行演習」だったのではという説もあるくらいです。
ともあれ、「皇朝十二銭」以降途絶えていた国産の銭貨が約650年ぶりに発行されたことは大いに意義のあることでしょう。それまでは、国内の経済を中国から輸入した銭貨に頼らざるをえない時代が続いていたのですから。
②元和通宝(げんなつうほう)
こちらも慶長通宝と同様に現物は存在するのですが、江戸幕府の公式な記録には鋳造された事実が記載されていません。銀貨と銅貨の2種類があるのも特徴です。
さらに銅貨には銭文が大字で描かれたものと小字で描かれたものの2種類が存在します。もっと細かな分類については割愛しますが、中には思わぬ価値を持った元和通宝があるかもしれませんので、ぜひ弊社に査定を依頼してみてください。
③寛永通宝(かんえいつうほう)
なにしろ、寛永13年(1636年)に鋳造が始まってから幕末までの約230年もの長きにわたり発行が続けられたからです。江戸時代の大半で鋳造が行われた計算になります。
それだけにバリエーションもかなり豊富で、全容を把握するのは至難の業です。発行枚数も相当数に上り、さほど珍しい古銭ではありません。
しかしながら、中には大変珍しいものが存在するのも事実ですので、お手元に寛永通宝があれば一度鑑定を依頼されてはいかがでしょうか。
寛永通宝については、「寛永通宝の価値と簡単な分類方法を教えます!」も合わせてご一読ください。
④宝永通宝(ほうえいつうほう)
こちらは、当時「大銭(おおぜに」と呼ばれ、1枚で10文の価値があるとされました。しかしながら、実際の量目は寛永通宝の1匁(3.75g)に対して、2匁5分(9.4g)ほどしかありませんでした。
つまり、実際には2文半の価値しかないのに、幕府はこれを10文として通用させようとしたのです。さすがに両替商や庶民からの「ウケ」は最悪で、1年と持たず通用停止となってしまいました。
深冠と浅冠と呼ばれる2種類の銭貨が存在するのも特徴です。
⑤天保通宝(てんぽうつうほう)
縦長の楕円形をした大きな姿がすぐに連想できた方も多いことでしょう。また、天保通宝は一枚で百文に値することから「当百」という異名も持っていました。ところが、天保通宝の実際の量目は5匁5分しかありません。
つまり、5文半の価値しかないものを100文として通用させようとしたのですから、幕府サイドとしてはこんな旨味のある話はありません。
逆に銭相場の下落に拍車をかけてしまう結果に終わりました。
天保通宝については、鑑定レポート:「天保通宝の種類について解説」も合わせてご一読ください。
穴銭の名称/買取価格/買取日 | ||
慶長通宝(小字) | 4,000円 | 2022/12/04 |
慶長通宝(宝頂星) | 30,000円 | 2023/03/05 |
元和通宝 | 20,000円 | 2023/07/13 |
新寛永通宝 6枚まとめて | 10,000円 | 2023/06/23 |
宝永通宝 | 400円 | 2023/07/22 |
天保通宝(母銭) | 15,000円 | 2023/06/13 |
その他については、穴銭の買取価格一覧表をご確認ください。
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