メキシコ金貨の種類と価値を知ろう
南米大陸において、ブラジル、アルゼンチンに次ぐ広さを誇るメキシコ。
メキシコは、金、銀、銅を産出する資源大国です。
質のよいメキシコの金で発行されたメキシコ金貨には、どのような歴史、価値があるのでしょうか。
この記事では、市場で人気のコインも含めて、メキシコ金貨の種類や価値について詳しく解説します。
目次
メキシコ金貨の歴史
メキシコ金貨の歴史は、いつ頃始まったのでしょうか。
植民地時代から現代にいたるまで、メキシコ金貨の変遷を解説します。
植民地時代のメキシコ金貨
金や銀の鉱床が豊かであること、南米と北米を結ぶ戦略的な観点からも、メキシコはスペインにとって非常に大きな役割を持つ植民地となったのです。
1732年に発行されたエスクード金貨には、当時のスペイン王フェリペ5世とスペイン王室の紋章が刻まれています。
1700年代、フェリペ5世だけではなく、フェリペ6世、カルロス3世、カルロス4世などのスペイン王の肖像を刻んだ金貨が、メキシコ産のゴールドによって発行されたのです。
ちなみに、この時代に設立された「Casa de Moneda de México」は、世界で最も古い造幣局のひとつとされています。
スペイン王たちの肖像が刻まれたメキシコ金貨は近年、大幅に価値を上昇させています。
独立への道!混迷の時代のメキシコ金貨
スペインの圧政下にあったメキシコは、1810年頃から独立の気運が高まります。
世界的に銀の需要が高まっていた時代ですが、1822年に当時のメキシコ皇帝アウグスティン1世によって金貨が発行されます。
わずか1年の在位であったアウグスティン1世の肖像とカンムリワシが描かれ、「MEX(メキシコ)」の文字が刻まれています。在位期間が短かったアウグスティン1世の金貨は、希少性の高さで人気があります。アウグスティン1世の時代は、メキシコの通貨はスペインの影響を受けてエスクードと呼ばれていました。
1863年にエスクードはペソへと改定され、現在にいたるメキシコのペソが誕生したのです。この時単位として用いられたのが「$」の記号。アメリカのドルに先んじて、メキシコのペソがこの記号を採用しました。
1870年には「REPUBLICA MEXICANA(メキシコ共和国)」と刻まれた1ペソ、2 1/2ペソ、5ペソ、10ペソ、20ペソの金貨が発行されています。
世界で価値が高い20世紀のメキシコ金貨
19世紀のメキシコは、ヨーロッパの介入によって混乱が深まりました。
1864年にはオーストリアのハプスブルク家の大公マクシミリアンがメキシコ皇帝となりますが、1867年には処刑。
その後、1876年から1910年まで、大統領制を布いたメキシコは秩序を回復し、近代化が進みました。1905年の改定によって、メキシコのコインには「ESTADOS UNIDOS MEXICANOS(メキシコ合衆国)」と記されるようになりました。
1910年にメキシコ革命が勃発、再び混乱の時代を迎えますが、1921年に記念すべきメキシコ金貨が発行されました。それが、自由の女神が描かれた50ペソ金貨です。スペインからの独立100周年を記念した50ペソ金貨は、歴史的な意味において、また純度の高さにおいて、世界でひじょうに評価が高く、価値の高い金貨になっています。
地金型の金貨の価値一覧のページもあわせてご確認ください。
主なメキシコ金貨の価値
近年価値が上昇している金の産出国メキシコの代表的な金貨を確認していきましょう。どんなデザインがあり、それぞれどれほどの価値があるのでしょうか。
主なメキシコ金貨について解説していきます。
1921年発行 50ペソ金貨
メキシコ金貨の中でも最も人気が高く、世界のアンティークコイン市場でも高値で取引されているコインが、1921年発行の50ペソ金貨です。
スペインからの独立100周年を記念して発行された、歴史的にも重要な金貨とされています。
- 直径:37.1mm
- 重さ:41.6g
- 品位:Pt900
金貨としてはかなり大型です。
1921年から1947年にかけて、合計で800万枚が発行されたといわれています。
メキシコ人にとっては独立を祈念するシンボル的な金貨であり、アンティークコインのファンのあいだではビジュアルの美しさで人気があります。
デザインを見てみましょう。
天使のような姿をしているのは、ギリシア神話の女神「ニケ」。ニケは「勝利」の擬人化したものとして、現在も人気があります。スポーツメーカーの「ナイキ」は「ニケ」の英語読みなのです。翼のある優美な姿が芸術的ですね。
女神ニケの両脇にあるのは、メキシコの有名な2つの火山。
向かって右側が「メキシコ富士」とも呼ばれる「ポポカテペトル山」です。もうひとつは「イスタシワトル山」。
女神と三角形の構図をなし、見る人に安定感のある美を感じさせてくれます。
裏側にはメキシコの国章があります。
サボテンにとまった鷲が蛇を銜えている印象的な意匠で、メキシコの古い文明アステカの伝説にちなんでいるといわれています。
1921年発行の50ペソ金貨は、1944年のメキシコ経済危機以後、その価値が急上昇しました。
1921年発行 50ペソ金貨 |
要査定 |
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1870-1905年発行 20ペソ金貨
メキシコでは混乱の時代にも、金貨が発行されていました。
とくにメキシコ独自の「ペソ」の導入後の金貨として人気があるのが、1870年から1905年まで発行されていた20ペソ金貨です。
- 直径:34.4mm
- 重さ:33.84g
「REPUBLICA MEXICANA(メキシコ共和国)」時代の歴史の証人として、今も輝きを失っていません。
19世紀から20世紀初頭に発行された20ペソにも、メキシコの象徴である「蛇を口にする鷲」が描かれています。
片面には、自由の象徴であるフリジア帽、正義を表す天秤、「LEY」と書かれた法律の巻物、そしてその背後で2本の剣が交叉しています。
フランスのコインにもよく描かれるフリジア帽は、古代ローマに起源があります。奴隷の身分から解放された人がかぶっていた帽子が、近代では「自由」のシンボルとしてコインにデザインされるようになりました。
まったく同じデザインで、サイズだけ一回り小さい10ペソ金貨もあります。
1870-1905年発行 20ペソ金貨 |
要査定 |
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1918-1948年発行 2.5ペソ金貨
20世紀に入ると、メキシコ金貨にはある人物の横顔が描かれるようになりました。1918年に発行された2.5ペソ。小型のかわいい金貨です。
- 直径:15.5mm
- 重さ:2.0833g
2.5ペソという珍しい金額の金貨には、メキシコで「独立の父」と呼ばれているミゲル・イダルゴ(Miguel Hidalgo)の姿が。メキシコ独立運動の指導者で、1810年にスペインに蜂起した聖職者です。
教育に力を入れただけではなく、農場経営や手工業による経済のテコ入れを考案した指導者であり、現在のメキシコでも存在感は大。ミゲル・イダルゴはスペイン軍に捉われて処刑されていますが、メキシコでは今でも尊崇の対象になっています。
2.5ペソ以外にも、2ペソや5ペソ、10ペソ金貨にミゲル・イダルゴがデザインされています。
1918-1948年発行 2.5ペソ金貨 |
要査定 |
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1917-1959年発行 20ペソ金貨
メキシコの古い文明がデザインされた金貨もあります。
これは18世紀にメキシコシティで発見されたアステカ文明の遺物で、「太陽の石(Pietra del Sol)」と呼ばれています。アステカのカレンダーであったようで、メキシコ人にとっては自分たちのルーツを示す歴史的遺産です。
「太陽の石」がデザインされた20ペソ、古代文明のファンにとってはたまらない1枚です。
- 直径:27.25mm
- 重さ:16.666g
1917-1959年発行 20ペソ金貨 |
要査定 |
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人気を誇るメキシコ金貨、本物と偽物の見分け方
世界で人気を誇るメキシコ金貨は、高いプレミア価値が付けられますが、その分、偽物も多く出回っているといわれています。
そこで、本物と偽物はどのように見分けるのでしょうか。いくつかの例を紹介します。
要注意!偽物が多い1921年発行の50ペソ金貨
燦然と輝くメキシコ金貨の中でも、とくに人気が高いのが1921年に発行された50ペソです。
南アフリカで発行されたクルーガーランド金貨と並んで質が良いといわれる50ペソ金貨は、1944年の経済危機以降、著しくその価値を上昇させました。
このため偽物が多く出回っており、個人間の取引はおすすめできません。
必ずプロのディーラーを介して売買する必要があります。
メキシコ金貨、偽物と本物の見分け方
メキシコ金貨の真贋は、プロに任せるのが一番安全。
でも手元にあるメキシコ金貨が本物か知りたい場合には、いくつかの方法があります。
重さや直径を確認する
メキシコの金貨の真贋を知るには、オリジナルのコインのサイズや重さを知るのが最も手っ取り早い方法。
直径や重さがオリジナルと異なる場合は、偽物の可能性が高くなります。
金貨の光沢を確認する
金貨というとピカピカ光っている印象がありますが、本物の金貨は柔らかい光が特徴。それほど光沢はありません。これ見よがしにピカピカとしているコインは、金メッキの偽物の可能性が大。
コインの表面の変色や斑点を確認する
金はほかの物質と化学反応を起こさないため、変色や斑点がつくことは非常にまれ。
コインの表面が変色していたり斑点が残っている場合は、フェイクを疑う必要があります。
メキシコ金貨と同時代のコインの種類と価値
市場で高く評価され、プレミア価値が付けられているメキシコ金貨。
同時代に登場した人気のコインをご紹介します。
1851-1852年発行 ブラジル2万レイス金貨
南米における金貨の人気はメキシコのものが突出していますが、ポルトガルの植民地であったブラジルの金貨にも価値あるコインがあります。
裏には当時のブラジルの国章が刻まれ、南米の歴史を語る金貨として人気があります。
ヨーロッパと南米の関係を語ってくれる貴重な金貨ですね。
- 直径:30mm
- 重さ:17.9296g
1851-1852年発行 ブラジル2万レイス金貨 |
要査定 |
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1920-1923年発行 アメリカ20ドル金貨
1921年発行のメキシコ金貨とよく似たアメリカ金貨があります。
1920年~にサンフランシスコで鋳造された20ドル金貨です。アメリカ史上、最も美しい金貨のひとつとされています。
メキシコ金貨には蛇を口にする鷲が描かれていました。一方アメリカの20ドルには、太陽光線の上を飛ぶ鷲が、躍動的にデザインされています。
世界の大国になろうとしていたアメリカの国威を感じる、美しい金貨ですね。
1920年~発行の20ドル金貨、かなりサイズの大きい金貨です。
- 直径:34.1mm
- 重さ:33.43g
1920-1923年発行 アメリカ20ドル金貨 |
要査定 |
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