ダブルイーグル金貨とは?価値やその他アメリカ金貨の種類について解説します。
ダブルイーグル金貨とは、20世紀初頭にアメリカで発行された20ドルコインです。
アメリカの古き良き時代を思わせる美しさで定評があり、「セント・ゴーデンス金貨」と呼ばれることもあります。アメリカで発行されたコインの中でも、市場で高い評価がつく金貨の一つです。
ダブルイーグル金貨にはどんな特徴と魅力があるのでしょうか。
まずは発行の経緯や価値について、詳しく解説します。
目次
ダブルイーグル金貨 20ドル金貨とは
発行年 | 1907~1933年 |
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品位 | K21.6 |
直径 | 34mm |
重さ | 33.436g |
本日2024年11月21日の価値(1gあたり) |
ダブルイーグル金貨のデザイン
▼ダブルイーグル金貨に描かれた女神のモデルとなった彫刻
アメリカで発行されたコインの中でも、特に美しいといわれるダブルイーグル金貨。
表面には、平和の象徴であるオリーブの枝を持つ女神が描かれています。
1902年に、彫刻家セント=ゴーデンスが制作した≪ウィリアム・テカムセ・シャーマン将軍像≫という作品があります。この彫像の女神が、セント・ゴーデンス金貨のモデルになっているといわれています。
女神の後ろには、「啓蒙」を意味する太陽光と米国連邦議会議事堂が見えます。
女神の頭上には「LIBERTY(自由)」の文字、そして発行年が表記されています。
女神を囲む星の数は46個。当時の州の数と合致しています。
裏面を見てみましょう。
「ダブルイーグル」の由来となった鷲の姿があります。大空を舞う躍動的な鷲は、1857年発行のペニーコインからインスピレーションを得たといわれています。
現在もアメリカのシンボルとして有名な「白頭鷲」は北米にのみ生息するとされ、アメリカでは1776年の貨幣からデザインされている伝統的なテーマです。
飛翔する鷲の上にはアメリカ合衆国発行の20ドルであることを示す「UNITED·STATES·OF·AMERICA TWENTY·DOLLARS」の文字。
裏表ともに太陽の光が印象的ですね。
側面も確認します。
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ダブルイーグル金貨誕生の経緯
ダブルイーグル金貨をデザインした彫刻家オーガストス・セント=ゴーデンス
このデザイナーの名前から、「セント・ゴーデンス20ドル金貨」とも呼ばれていますが、この金貨の誕生には、どんな経緯があったのでしょうか。
いくつかのエピソードとともに解説します。
テディベアとゆかりの深い大統領によって発行されたコイン
セント・ゴーデンス(Saint-Gaudens)20ドル金貨は「セント・ゴーデンズ」と発音されることもあります。金貨のデザイナーであるオーガストス・セント=ゴーデンスの名字から、この名で呼ばれています。
セント・ゴーデンス20ドル金貨は、第26代アメリカ合衆国大統領セオドア・ルーズベルトによって発行されました。ルーズベルト大統領は自然保護という革新的な政策を打ち出した大統領であり、テディベアの名前の由来となったことでも有名です。
ルーズベルト大統領は、当時のアメリカの貨幣が平凡すぎると判断、彫刻家のオーガストル・セント=ゴーデンスに20ドル金貨のデザインを依頼しました。
1905年11月にセント=ゴーデンスが提出したデザインの下書きを見たルーズベルト大統領は、「古代ギリシア時代から続くいかなるコインより美しい」と大満足だったとか。
「リバティ・ヘア金貨」の跡を継いだセント・ゴーデンス金貨
数々の美しい金貨の発行で知られるアメリカ。
アメリカの金貨といえば、1800年代のゴールドラッシュの影響を受けて誕生した「リバティ・ヘッド」が有名です。
1850年から1907年にかけて発行されていた「リバティ・ヘッド」金貨は、その名の通り女神の頭部がデザインされています。以前は金貨の最高額面とされていたのは10ドルでしたが、アメリカの景気が上向いた「リバティ・ヘッド」から20ドル金貨が生まれました。
「リバティ・ヘッド」は長期間流通しましたが、ルーズベルト大統領の肝いりで新たな金貨、「セント・ゴーデンス」の発行が決定したのです。
「世界一美しいコイン!」を目指したセント・ゴーデンス金貨
ルーズベルト大統領は、アメリカの威信をかけて「世界一美しいコインを!」とセント=ゴーデンスに注文をつけたといわれています。
リンカーン像や記念碑の製作で一流の彫刻家と評価が高かったセント=ゴーデンスは大いに張り切り、弟子たちとデザインに頭をひねりました。
最初に作られたセント・ゴーデンス20ドル金貨は、立体感がありすぎて流通に向かず、このタイプは1万2000枚しか発行されていません。「ハイレリーフタイプ」と呼ばれるこのバージョン、現在も大変な高額で取引されています。
1907年に流通し始めた金貨は通常の厚みとなっています。発行枚数は200万枚~900万枚といわれており、はっきりしません。発行枚数が多いため市場に出回りやすい金貨のひとつですが、未使用の場合は100万円を超える値がつくこともあります。
ダブルイーグル(セント・ゴーデンス)金貨を巡るエピソード
人気のある金貨だけに、ダブルイーグル(セント・ゴーデンス)20ドル金貨にはエピソードもたくさんあります。よく知られた逸話をご紹介します。
彫刻家セント=ゴーデンス、名声と悲劇
セント・ゴーデンス20ドル金貨をデザインした同名の彫刻家は1848年生まれ。ルーズベルトから金貨のデザインを依頼されたときは50代に入り、芸術家として円熟の時代を迎えていました。
アイルランドのダブリンからアメリカに移住したセント=ゴーデンス。若いころはパリの国立美術学校で学び、イタリアを周遊してルネサンス彫刻に触れ感銘を受けたそうです。
ヨーロッパのクラシックな美術と自然主義を学んだセント=ゴーデンスの作品は、美しさだけではなく、威厳と気品があふれています。1880年以降、セント=ゴーデンスは世界における彫刻界の重鎮として重きをなしました。
アメリカで活躍するようになってからは、ワシントン、ニューヨーク、ボストンなどに公共的な作品を数多く残しています。
セント=ゴーデンスの作風を信頼したルーズベルト大統領の依頼で誕生したコイン。
しかしセント=ゴーデンスは、金貨が流通し始める直前、1907年8月に死去。1907年の年末に発行されたセント・ゴーデンス金貨発行直前に死を迎えるという悲劇的なエピソードがあります。
セント・ゴーデンス金貨の終焉
今でこそ大変な人気を誇るセント・ゴーデンス金貨、なぜ1933年に発行が終わってしまったのでしょうか。
これは、当時のアメリカの情勢が影響しているといわれています。
1930年代、アメリカは経済大恐慌に襲われました。大恐慌に対する経済対策として、アメリカ政府は民間による金の保有に制限をかけたのです。
こうした事情から、セント・ゴーデンス20ドル金貨の発行はストップ。
1933年の文字が入った金貨は、歴史的に見ても大きな価値があり、2021年のオークションでは1887万ドル(約20億円)というとんでもない価格がつきました。
セント・ゴーデンス金貨に似たコイン
「ダブルイーグル」と呼ばれるセント・ゴーデンス20ドル金貨。アメリカの象徴である鷲がデザインされた金貨は、他にもたくさんあります。
その中でも人気の金貨をご紹介します。
25ドルイーグル金貨
発行年 | 1986~2021年 |
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品位 | K22 |
直径 | 27mm |
重さ | 16.996g |
1933年に発行が中断された鷲のデザインの金貨でしたが、1986年、資産向けの金貨として再び発行され始めます。
世界中に広がりつつあった金貨ブームを受けて発行された25ドルイーグル金貨。女神像はセント=ゴーデンスのバージョンです。ダブルイーグルは女性彫刻家のミレー・フロスト作。鷲のファミリーが描かれるという女性的な雰囲気が魅力的で、イーグル金貨のなかでも人気があるタイプです。
25ドルの金貨には「IN GOD WE TRUST E PLURIBUS UNUM(われわれは唯一の神を信じる)」というモットーが刻まれています。
リバティ・ヘッド20ドル金貨
発行年 | 1850~1907年 |
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品位 | K21.6 |
直径 | 34mm |
重さ | 33.436g |
1850年から57年という長い期間流通していた「リバティ・ヘッド」の20ドル金貨。実は1849年に発行されたたった1枚が、スミソニアン博物館に残っているという逸話があります。
デザインしたのは、25年ものあいだアメリカの造幣局で彫刻の主任を務めていたジェイムス・ロングエーカー。肖像画家として有名だったロングエーカーによる女神の横顔は、ギリシア彫刻を思わせる端正さがあります。
裏面の鷲はオリーブの枝を爪で持ち、紋章のような趣。当時のアメリカの13州を表す星が見えます。
25ドルバッファロー金貨
発行年 | 2008年 |
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品位 | K24(純金) |
直径 | 27mm |
重さ | 15.544g |
デザインしたのは20世紀前半を代表する彫刻家ジェイムス・アール・フレイザー。ドラマチックな表現で定評のあったフレイザーによって、ネイティヴ・インディアンとバッファローがリアルに描かれています。アメリカのアイデンティティを表現しており、先住民の文化や開拓者精神への尊重が込められています。