ソブリン金貨とは?歴史から種類、偽物も解説!


ソブリン金貨ってなんですか?

イギリスの法定通貨である1ポンド金貨です。
1489年に初めて発行され、一時中断を経て1817年から現在まで続いています。表面にはイギリスの君主の肖像、裏面には聖ジョージと竜のデザインが描かれていることが多いです。
金品位は22金(91.67%)で、投資用としても人気があります。
ソブリン金貨の歴史
世界に冠たる大英帝国として栄えたイギリス。
そんなイギリス代々の君主が刻まれたコインがあるのを、ご存じでしょうか?
歴史や格式を感じることができるこのコインは、「ソブリン金貨」と呼ばれています。
- いつ頃誕生し、どんな変遷を経てきたのか?
- アンティークコイン市場でどの程度価値があるのか?
この記事では、イギリスのソブリン金貨について、そしてギニー金貨との違いや真贋についても詳しく解説します。
ソブリン金貨は、長い歴史を誇るコインです。
イギリスの歴史を語る歴史の証人といってもよいかもしれません。
まずは、金貨の歴史や変遷を、詳しくご紹介します。
なぜソブリンと呼ばれるの?
ソブリンのスペルは「Sovereign」と綴ります。
意味は「君主」や「国王」です。
ではなぜ「君主の金貨」と呼ばれるのでしょうか?それは、金貨の起源に由来があります。
発行されたのは、1489年のことでした。
王立造幣局に新しい金貨の発行を命じたのは、当時のイギリス王ヘンリー7世です。
新たな金貨には、王であるヘンリー7世の肖像画が刻まれました。
このことから、ソブリン金貨と呼ばれるようになったのです。
イギリスには、それまでも金貨は存在していました。
しかし、ソブリン金貨には王の肖像とともに、王家の紋章、ヨーク家とランカスター家の融合を象徴するチューダー家のバラがデザインされました。
その格式の高さから、ソブリン金貨は英国王の権威の象徴として定着していったのです。
まさに「君主の金貨」の名にふさわしい概念を持つコイン、といったところでしょうか。
その後の変遷
1489年に登場したソブリン金貨は、その後どんな変遷をたどったのでしょうか。
ヘンリー7世が玉座に座ったデザインは、その後、ヘンリー8世やエリザベス1世の時代にも発行が続きました。
ところが、この最初の金貨は1603年に発行が中止されました。
イングランドとスコットランドの王を兼ねたジェームス1世の治世の始まりとともに、金貨の肖像画はヘンリー7世からジェームス1世へと切り替えられました。
ジェームス1世金貨
1604年を最後に鋳造が打ち切られ、以後19世紀初頭まで、金貨はギニー金貨のみとなりました。
1817年の金本位制導入に伴い貨幣法が制定され、ソブリン金貨も復活しました。
再登場した金貨にも、代々の君主がデザインされています。
すべて横顔で描かれ、イギリスを守護する聖ジョージや王家の紋章とセットになっているのが特徴です。
ギニー金貨との違い
ソブリン金貨は1489年に発行され、1604年に発行が一時停止されますが、この期間に発行されたものを「旧ソブリン金貨」と呼びます。
そして、1817年以降に再度発行が開始されますが、これを「ソブリン金貨」と呼びます。
一方で、ギニー金貨は1663~1814年までに限り発行されたものです。
現在でいうガーナやトーゴ近くのギニア海岸から調達された金が使われたため、ギニアの金貨という意味で「ギニー金貨」と呼ばれます。
サイズや重さ
君主にふさわしいゴールドのコイン、ソブリン金貨のサイズや重さはどうなっているのでしょうか。
1489年に発行された最初のソブリン金貨は、大きさも重量もまさに君主級。
23カラットの金の純度は96%でした。重さは15.27g。
ヘンリー7世の息子、ヘンリー8世は、金を22カラット(純度92%)に下げ、これがクラウンゴールドと呼ばれるイギリス金貨の基準となりました。
ヘンリー8世のクラウン金貨
1816年に再登場したソブリン金貨は、最初のタイプに比べると重さは約半分の7.3224g。
直径も約半分の22mmとなり、現在までこのサイズと重量が守られています。
ソブリン金貨のデザイン
英国王の威信を伝えるソブリン金貨。
そのデザインは、時代によって異なる部分と、英国のシンボルとして変わらない部分があります。
金貨のデザインについて、詳細を見ていきましょう。
希少性の高い最初の金貨 ヘンリー7世
1498年に発行された最初のソブリン金貨は、当時の技術力を反映してサイズが大きいのが特徴です。
前述したように、玉座に座る英国王と、当時の王家であったチューダー家のバラがデザインされているのが特徴です。
ヘンリー7世


英国王家は、時代によって名字が異なります。
ヘンリー7世から始まるチューダー王家は、その孫のエリザベス1世が独身であったため1603年に断絶。
エリザベス1世のあとを継いだジェームズ1世はステュアート家の出身であるため、バラの花のデザインも1603年以降は消滅しました。
デザインを比較してみましょう。
イギリスの守護聖人がモチーフに
1817年に再登場したソブリン金貨には、君主の横顔と、英国の守護聖人ジョージがセットとなってデザインされています。
これは当時の英国王が、ハノーヴァー家出身のジョージ3世であったことに由来しているといわれています。
2022年に即位した現国王チャールズ3世のソブリン金貨も、このデザインで発行されています。
聖ジョージはイタリア人の作品
ソブリン金貨に彫られた聖ジョージは、3世紀に殉教した聖人です。
父の代から高名な軍人であり、ドラゴン退治の伝説を持つ聖人として、中世から大変な人気を誇りました。
ラファエロをはじめとする高名な芸術家たちも、ドラゴンを退治する聖ジョージをテーマにした作品を数多く描いています。
イギリスのソブリン金貨のシンボルともいえる聖ジョージは、躍動的に美しく描かれた傑作です。
ソブリン金貨の聖ジョージをデザインしたのは、イタリア生まれのメダル彫刻師、ベネデット・ピストルッチでした。
コインやカメオのデザインで突出した才を見せたピストルッチは、30代で渡英、王立造幣局の依頼で聖ジョージをデザインしました。
ピストルッチが残したさまざまな作品の中でも傑作中の傑作として、200年以上も使用されているデザインなのです。
紋章が描かれることも
ソブリン金貨には聖ジョージが刻まれることが大半ですが、ジョージ4世の時代に王家の紋章をデザインしたタイプも発行されました。
英国王の紋章は非常に複雑で、イギリス王を象徴するライオン、スコットランド王のシンボルである竪琴などが細かく刻まれています。
ジョージ4世のほかにも、ウィリアム4世やヴィクトリア女王の時代にも、紋章をデザインした金貨が発行されています。
ジョージ4世
ウィリアム4世
ヴィクトリア女王
ソブリン金貨誕生500年を記念した復刻版
1817年以降は、君主の横顔が彫られてきたソブリン金貨。
ところが1989年、エリザベス2世の時代に、旧ソブリン金貨の復刻版として、玉座に座る女王をデザインしたコインが登場しました。
ソブリン金貨500年記念金貨
これは、1489年に最初のソブリン金貨が発行されてから500年を記念したプルーフコインです。
玉座のエリザベス女王が、王のシンボルである王笏を手にした優雅なデザインが魅力的です。
裏面には、オリジナルのソブリン金貨を思わせるチューダー家のバラと王家の紋章が彫られて、中世の趣を伝える素敵なコインになっています。
日本で大人気の1982年銘エリザベス二世の金貨
日本ではとくに、1981年、1982年に発行されたエリザベス二世が描かれた金貨が人気です。
同じデザインでも、種類が異なるので重さや価値などを一覧で紹介します。品位はすべて金 (.9167)です。
重さ | 直径 | |
---|---|---|
ハーフソブリン(1980~1984年発行) |
3.99g |
19.3mm |
1ソブリン(1974~1984年発行) |
7.98g |
22.05mm |
2ソブリン(1980~1983年発行) |
15.98g |
28.4mm |
5ソブリン(1980~1984年発行) |
39.94g |
36.02mm |
ソブリン金貨の額面は?
ソブリン金貨の額面は、計4種類あります。
最も一般的なタイプで、額面は1ポンド(または20シリング)です。金貨は約7.3グラムの金を含みます。
ソブリンの半分の額面、すなわち10シリングの価値があります。ハーフソブリンはソブリンの約半分の重さです。
これはソブリンの二倍の額面、つまり2ポンドの価値があります。この種類の金貨は比較的珍しく、特定の期間や特別な記念イベントのために発行されることが多いです。
これはソブリンの四分の一の額面で、5シリングの価値があります。しかし、クォーターソブリンはあまり一般的ではなく、限定的な発行でした。
本物と偽物はどうやって見分ける?

そのため、希少性が高いタイプはそれほど多くありません。もちろん、1489年から発行された最初の金貨、1816年に再発行された金貨の初期のタイプは、発行枚数が少ないため高額になることが通常です。
こうした事情から、ハノーヴァー王家のジョージ4世とジョージ5世のソブリン金貨は、偽物も多く出回っているといわれています。
では本物と偽物、真贋はどのように見分けるべきなのでしょうか。
そのコツを簡単に説明します。
これが偽物!

- 重さが基準値から逸脱するもの
- 直径が基準値から逸脱するもの
- 磁石にくっつくもの
- 酸に触れると緑色に変色するもの
とはいえ、重さや直径はソブリン金貨の種類によっても異なるため、真贋を見極めるのは素人には難しいといえます。
困った場合には、専門の業者に相談するのが一番です。
同じ時代のアンティークコイン
コレクターに大人気のソブリン金貨と同時期に発行されたコインには、どんなものがあるのでしょうか。
特に人気のコインをいくつか紹介します。
ハーフソブリン
ハーフソブリンは、その名のごとく1ポンドの半分の価値を持つコインです。
ハーフソブリンの発行は、ソブリン金貨より遅れることおよそ半世紀、1554年に始まりました。
ヘンリー8世 ハーフソブリン金貨
エリザベス1世の父、ヘンリー8世の時代に登場したハーフソブリンはその後、ソブリン金貨と同じような変遷をたどり、現在も王立剃造幣局から発行されています。
直径は19mm、重さは3.994g。
ソブリン金貨より一回り小さく、重さは約半分です。
歴代の君主と聖ジョージのデザインも同じで、ミニサイズのソブリン金貨といったところです。
フランツヨーゼフ1世 100コロナ金貨
英国王室と同様、ヨーロッパの歴史に大きな影響を及ぼしたハプスブルク家。
20世紀初頭のハプスブルク家を統治していたのは、「不死鳥」と称されたフランツヨーゼフ1世です。
日本でも人気の美貌の皇后エリザベトと並んで、ヨーロッパの最後の輝きともいわれてきました。
ハンガリー フランツヨーゼフ1世 100コロナ金貨
ソブリン金貨と同様、フランツヨーゼフ1世の横顔の肖像が美しい100コロナ金貨は、ハプスブルク家の知名度を反映して、人気が高いコインです。
英国王室の聖ジョージに対して、ハプスブルク家は双頭の鷲がシンボル。
直径37mmのサイズは、欧州随一の名門にふさわしい貫禄があります。
ジョージ5世 ワイタンギ銀貨
ジョージ5世のソブリン金貨は、希少性の高さで高額になるケースが多いといわれています。
そのジョージ5世の時代、1935年に発行されたのがワイタンギ銀貨と呼ばれるコイン。
ニュージーランド ジョージ5世 ワイタンギ銀貨
英国の植民地であったニュージーランドでは、先住民と入植したイギリス人の争いが絶えませんでした。
紛争の解決のために、1840年にワイタンギ条約が締結されました。
1935年に発行されたワイタンギコインは、ニュージーランド出身のアーティストがデザインし、改めて両国間の絆を象徴する記念コインとなったわけです。
エリザベス2世の祖父であったジョージ5世は、開明的な君主として現在も人気を誇ります。
ジョージ5世が王冠をいただいた横顔の美しさも、このコインの人気を支えているといえるでしょう。
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1498年に発行されたソブリン金貨は、5世紀におよぶ歴史を誇るコインです。
ヨーロッパの歴史に大きな影響を与えたイギリス歴代の君主がデザインされ、金の価値だけではなく、歴史や美術と関連して評価されています。
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