10銭札(十銭札)とは?歴史や特徴、当時の価値から買取相場まで解説
明治から昭和にかけて発行されたこの小額紙幣は、人々の生活に密着しながらも、時代の変化を示していました。この記事では、デザインの変化や経済的価値の推移、そして現代におけるコレクターズアイテムとしての魅力までご紹介。
4種類の10銭札それぞれの価値も解説するので、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
10銭札(十銭札)とは
10銭札(十銭札)は、日本の貨幣史上でも重要な紙幣です。
これは、日本銀行券の一種として発行された小額紙幣を指します。10銭という額面は、当時の日本経済において生活に密着した紙幣でした。
日本銀行券としての10銭札は、明治時代から昭和初期にかけて流通しました。
この紙幣は、庶民の日常生活に大きく関わる存在でした。例えば、日用品の購入や公共交通機関の利用など、様々な場面で使用されていたのです。
10銭札の発行は、日本の近代化と経済成長を反映しています。小額紙幣の需要増加に応えるため、政府や日本銀行が発行を行いました。
この紙幣は、時代とともに変化し、デザインや素材も進化していきました。
10銭札(十銭札)の歴史
十銭紙幣の歴史は、明治時代から昭和28年まで続き、この間に4種類の紙幣が発行されました。
最初に登場したのは明治5年発行の明治通宝十銭札です。その後、大正6年から昭和28年にかけて大正少額紙幣十銭札が流通しました。昭和時代に入ると、さらに2種類の十銭紙幣が加わりました。
昭和期の十銭紙幣として特筆すべきは、八紘一宇塔十銭札と鳩十銭札です。
これらは発行数が多く、広く流通していました。これらの紙幣は「い号券」と「A号券」の2種類が存在しました。
しかし、1953年(昭和28年)末、「小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関する法律」の施行により、1円未満の日本銀行券や政府紙幣、貨幣が廃止され、十銭紙幣も失効しました。
十銭紙幣の券面には「拾錢」と表記され、1円の10分の1の価値がありました。
当初は十銭硬貨の代替として発行されましたが、硬貨需要は根強く、十銭通貨の発行高の6割以上を常に硬貨が占めていました。実質的に、紙幣と硬貨が並行して流通していた状況でした。
10銭札の種類と特徴
10銭札には、時代によって異なる種類が存在します。それぞれの10銭札は、発行された時期の社会背景や経済状況を反映しています。
以下、主要な4種類の10銭札について詳しく見ていきましょう。
明治通宝10銭札
明治通宝10銭券は、日本の通貨制度改革の過程で生まれました。
明治3年、新貨幣の製造と流通が始まりましたが、紙幣の状況はまだ整理されていませんでした。
当時、紙幣には様々な種類がありました。政府発行のもの、地方(府県)発行のもの、為替会社発行のもの、さらには江戸時代からの藩札まで、多種多様な紙幣が流通していたのです。
この状況は、偽造を容易にしました。雑多な紙幣の中で、偽造紙幣が横行する事態となったのです。
そこで政府は、新時代にふさわしい紙幣制度の確立を目指しました。旧紙幣を整理し、偽造が困難で精巧な新紙幣の発行を決定したのです。
新紙幣の製造技術は、当初ドイツから導入されました。その後、日本への技術移転が行われ、国内での製造が可能になりました。
大正小額紙幣10銭札(大正政府紙幣十銭札)
大正時代に登場した10銭札は、その名の通り、大正期に政府が発行した小額紙幣の一つです。この紙幣が世に出た背景には、興味深い経済事情がありました。
当時、硬貨の製造に必要な原材料の価格が急騰していました。この価格高騰は、硬貨製造に使用する金属の深刻な不足を引き起こしたのです。
この状況に対応するため、政府は新たな策を講じました。それが、大正小額政府紙幣としての10銭札の発行だったのです。
この10銭札は、硬貨の代替としての役割を果たしました。
原材料不足という問題に直面した政府の工夫の結果と言えるでしょう。
八紘一宇塔10銭札(日本銀行券十銭札)
太平洋戦争中、日本は深刻な金属不足に陥りました。硬貨用材料の枯渇により、政府は小額紙幣の発行を決定しました。
当初は政府紙幣での代替を検討しましたが、緊急性を考慮し、大蔵大臣の告示のみで発行可能な日本銀行券として十銭紙幣が登場しました。
印刷局の多忙により、い十錢券の図案検討は印刷局で行われたものの、その後の工程は全て凸版印刷に委託されました。
1944年10月25日の大蔵省告示で正式に様式が定められ、「い号券」と呼ばれるこの紙幣は、昭和期に発行された十銭紙幣の中でも特に流通枚数が多くなりました。
鳩10銭札(日本銀行券A号十銭札)
A号券は、1947年9月5日の大蔵省告示第205号で様式が定められ、1953年まで流通しました。
表面には平和の象徴である鳩が、裏面には民主主義を表す国会議事堂が描かれています。
戦後の混乱期に作られたため、透かしのない粗雑な印刷が特徴です。複数の民間印刷所で製造されたため、仕上がりに違いが見られます。
GHQの政策によりアルミニウム精錬が禁止され、インフレーションで材料価格が高騰したため、十銭硬貨の製造が困難になりました。そのため、再度十銭紙幣の発行が決定されました。
デザインはGHQの許可が必要で、軍国主義的な要素を避けた新しいものとなりました。
A号券は菊花紋章が描かれた最後の紙幣であり、旧字体・右横書きの最後の紙幣でもあります。
10銭札の過去と現在の経済的価値
10銭札の価値は、発行当時と現在では大きく異なります。時代の変化とともに、その経済的価値も変化してきました。
ここでは、10銭札の過去と現在の価値について詳しく見ていきましょう。
発行当時の10銭札の価値
各10銭札の発行当時の価値は、その時代の物価水準を反映しています。
当時の10銭は、例えば、米1升(約1.5kg)が約7銭、うどんやそばは約2銭で購入できました。
第一次世界大戦後のインフレにより、価値は低下。キャラメル1箱(20粒)や、駅の入場券が買えました。
昭和初期の不況期に発行されました。映画館の入場料が約20銭程度、かけそばが7銭でした。
戦時中のインフレにより、価値は大きく低下。まだ公共交通機関の運賃などに使用されてはいました。
しかし、明治時代や大正時代、昭和時代初期に比べると、10銭で購入できるものはかなり少なくなっていたのです。
現代の貨幣価値にした時の価値
物価の変動を考慮すると、10銭札の価値は現在の貨幣価値で以下のように換算できます。
- 明治通宝10銭札:約1000~1500円相当
- 大正小額紙幣10銭札:約800~1200円相当
- 八紘一宇塔10銭札:約500~800円相当
- 鳩10銭札:約200~400円相当
ただし、これらの価値は単純な物価変動だけでなく、経済構造の変化も反映しています。
例えば、明治時代と現代では、人々の消費行動や生活様式が大きく異なるため、単純な比較は難しい面もあります。
10銭札の現在の価値
10銭札は、現在では法定通貨としての価値はありませんが、歴史的・文化的価値や収集価値として高く評価されています。
その価値は、状態やレア度によって大きく変動します。
10銭札の現在の価値と買取相場
10銭札の現在の買取相場は、オンラインオークションや専門店によって異なります。
Yahoo!オークション、メルカリなどのオンラインマーケットでは以下の範囲で販売されていることが多いです。
10銭札 | 参考価格(※) | 参考画像 |
---|---|---|
明治通宝10銭札 |
1,500円~12,000円 |
|
大正小額紙幣10銭札 |
300円~1,000円 |
|
八紘一宇塔10銭札 |
10円~1,500円 |
|
鳩10銭札 |
1円~1,000円 |
※参考価格は2024年10月10日調べ
専門店での買取価格の相場は次の通りです。
10銭札 | 買取相場(※) | 参照 |
明治通宝10銭札 | 1,000円前後 | シャーロック古銭 |
大正小額紙幣10銭札 | 30円〜5,000円 | うるとく |
八紘一宇塔10銭札 | 100円〜300円 | シャーロック古銭 |
鳩10銭札 | 10円~200円 | うるとく |
※買取相場は2024年10月10日調べ
価格は保存状態や希少性によって大きく変動します。特に状態の良いものや、発行数の少ないものは高値で取引されることがあります。
価値の高い10銭札
特に高値で取引される10銭札には、以下のようなものがあります。
- 明治通宝10銭札の初期発行版
- 大正小額紙幣10銭札の未使用品
- 八紘一宇塔10銭札の未使用品
- 鳩10銭札の未使用品
状態が良好なものや希少性が高いものは、コレクターから高く評価されています。
気を付けるべき10銭札
10銭札の取引や収集を行う際は、偽造品に注意が必要です。
以下のポイントを確認しましょう。
- 紙質
- 透かし
- 印刷の精密さ
- 専門家による鑑定
偽造品は違法であり、取引も禁止されています。疑わしい場合は、必ず専門家に相談しましょう。
10銭札から知る日本貨幣の歴史
10銭札の歴史は、日本の近代化と経済発展の過程とも言えるものです。
明治時代の西洋化、大正時代の経済変動、昭和初期の国家主義、そして戦時下の日本と、各時代の特徴が10銭札のデザインや発行背景に反映されています。
日本の近現代史を語る貴重な資料としても、コレクターズアイテムとしても、人気のあるものが10銭札なのです。
もし古銭や古紙幣に興味を持たれた方や、手元にあるという方は、専門家による鑑定と評価をおすすめします。
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