ナポレオン金貨の種類と偽物の見分け方

ナポレオン金貨の種類と偽物の見分け方

今回はフランス金貨「ナポレオン金貨」の種類と、偽物を見分けるうえでのポイントについて解説していきます。

まずは有名な20フラン金貨をかんたんに紹介してから、その他の種類について確認していきます。

ナポレオン金貨(20フラン)の概要

まずはナポレオン金貨の中でも最もポピュラーな20フラン金貨の概要です。

ナポレオン金貨(20フラン)
品位

K21.6

重さ

6.45g

直径

21mm

デザイナー アルベール・デジレ・バール(Désiré-Albert Barre)

ナポレオンの肖像の周りには「NAPOLEON III EMPEREUR(皇帝ナポレオン3世)」、裏面には「EMPIRE FRANÇAIS(フランス帝国)」の文字が刻まれています。

*参考記事:フランス金貨の代表格!ナポレオン金貨ってどんな金貨?

フランス金貨「ナポレオン金貨」の種類

フランスのナポレオン金貨には、デザインや額面の違いでいくつかの種類があります。

ナポレオン3世のコインだけではなく、ナポレオン1世の金貨もぜひ知りたいところです。

とくに人気のあるナポレオン金貨の種類について解説します。

ナポレオン3世20フラン 月桂冠

ナポレオン金貨の中で最もメジャーな1枚がこれ。

皇帝在位から10年近くたった1861年、50代に入ったナポレオン3世の肖像画の金貨です。皇帝の象徴である月桂冠を頭に載せたナポレオン3世は、熟年男性の魅力があふれています。

麗々しく彫られたラテン語の「皇帝ナポレオン3世」が肖像画を取り巻き、下部にはこの金貨をデザインした彫刻師アルベール・デジレ・バールの苗字が見えます。

 

裏面は複雑なデザインが美しくまとめられています。ナポレオン3世が君臨した、フランス第二帝政の紋章です。

王冠、皇帝のマント、王笏、権力の象徴である鷲、ナポレオン1世が制定したフランス最高の勲章レジオンドヌールの十字架。

フランス皇帝の権威をすべて盛り込んだデザインです。

 

1861年から1870年にかけて発行されたこのコイン、数百万単位で発行されていました。フランスの金貨としては手に入りやすいところが人気です。

 

ナポレオン3世20フラン 月桂冠なし

クーデターを成功させ、大統領から皇帝となったナポレオン3世が即位してすぐに発行した20フラン金貨。国民の心情を慮ったのか、無冠の肖像がデザインされています。月桂冠をかぶった肖像は皇帝として理想化されていますが、こちらの肖像画は人間味が感じられる顔立ちです。

デザインは月桂冠をかぶったタイプと同じ、アルベール・デジレ・バール。バールは父のジャックス・ジャン・バールの代から、フランスのコインデザインを担ってきた家系です。

裏面はごくシンプルに、月桂冠が描かれています。

1853年から1860年まで大量に発行され、ヨーロッパで流通していました。

ルイ・ナポレオン・ボナパルト20フラン

ナポレオン3世は、順調に皇帝に即位したわけではありません。不遇の時代を経て、1848年に大統領になり、1851年のクーデターで皇帝となりました。

ナポレオン3世が大統領だった短い期間に発行された20フラン金貨は、肖像画や裏面のデザインは「ナポレオン3世20フラン 月桂冠なし」とまったく同じ。ただし、刻まれた文字が異なります。

 

肖像画を囲む文字に「皇帝」の文字はなく、「ルイ・ナポレオン・ボナパルト(LOUIS-NAPOLEON BONAPARTE)」という本名になっています。

また裏面は、「フランス帝国」ではなく「フランス共和国(REPUBLIQUE FRANÇAISE)」と記されています。

 

発行枚数は900万枚超。ナポレオン3世として皇帝即位したのは1852年12月。1852年にのみ発行された貴重な20フラン金貨は、まさに歴史の証人といえるかもしれません。

 

ナポレオン3世 100フラン

ナポレオン3世の金貨は、5、10、20、40、50、100の額面で発行されました。最も大きい100フランの金貨は、月桂冠なしのナポレオン3世とフランス帝国の紋章がセットに。

直径は35mm、重さは32.25806 g。金貨としての重みに帝政の貫録を感じます。

1855年から1859年まで、80万枚弱発行されました。

ナポレオン1世 20フラン

ナポレオンの金貨といえば、英雄ナポレオン1世のコインも気になるところ。

ナポレオンは1799年にフランスの実権を掌握、1804年にナポレオン法典を発布しています。これに伴い金貨の基準も制定され、20フラン金貨の発行も始まりました。

 

人気の20フラン金貨のなかでも、皇帝らしい姿がデザインされているのが月桂冠のナポレオンです。「NAPOLEON EMPEREUR(皇帝ナポレオン)」の文字がドラマチックです。

デザインは、英国やフランスで数多くのコインを手掛けたジーン・ピア・ドロー。左を向いた横顔、裏面の月桂樹のデザインを見ると、ナポレオン3世が叔父の先例を重んじたことがわかります。

 

ナポレオン1世は皇帝となった後も、発行するコインに「フランス共和国(RÉPUBLIQUE FRANÇAISE)」と刻ませていました。皇帝となって5年後の1809年に初めて、「フランス帝国(EMPIRE FRANÇAIS)」の文字が登場しています。

 

1807年から1808年にかけて、160万枚超が発行されました。

第一執政ボナパルト 20フラン

ナポレオン1世が、「ナポレオン」の文字を記さなかった20フラン金貨もあります。

1802年から1803年、皇帝即位前のナポレオンは「第一執政(Premier consul)」という地位にありました。この時期に発行されたコインには、「BONAPARTE PREMIER CONSUL(第一執政ボナパルト)」と書かれています。

ちなみに「Consul」とは古代ローマ時代の「執政官」のことで、ナポレオン1世が古代ローマを意識していたことがわかります。ナポレオンが好んで身につけた月桂冠も、実は古代ローマ時代の皇帝のシンボルでした。

 

裏面はクラシカルな月桂冠ですが、右向きの肖像画のデザインはピエール・ジョセフ・ティオリエ。科学者ジェームズ・スミソンのメダルも担当したことがあります。

第一執政時代のナポレオンは写実的にデザインされていて、彼の容姿の特徴も顕著。10万枚ほどしか発行されなかったこともあり、希少価値が高い20フラン金貨になっています。

どんなナポレオン金貨に価値があるのかについては「ナポレオン金貨 20フランの発行枚数から見る価値」をご確認ください。

ナポレオン金貨、偽物と本物の見分け方

ナポレオン金貨は人気があるため、多数の偽物も存在します。

本物と偽物をどのように見分けるのか、簡単にご紹介します。

 

額面に注意!

ナポレオン金貨は、5、10、20、40、50、100フランの額面のみ。

偽物の中には、これ以外の額面もあります。

とくに1970年代にはさまざまな額面の偽物が作られました。

偽物と見破る手段として、まずは額面に注意してください。

 

造幣所の文字の有無

ナポレオン金貨には、発行された造幣所の印が入っています。

 

A パリ造幣局

BB ストラスブール造幣局

M トゥールーズ造幣局

Q ペルピニャン造幣局

U トリノ造幣局

W リール造幣局

 

偽物には、こうした文字が入っていないものもあり。

目を凝らして小さな文字を確認してみてください。

 

サイズを確認!

偽物の中でも粗雑な作りのものには、オリジナルのサイズと異なるものもあります。

ナポレオン金貨の20フランは直径21mm、重さは一般的に6.45gです。

疑わしいなと思ったら、サイズを計測してみましょう。

金価格の変動が大きいので、ナポレオン金貨(フランス)の買取価格には要注意ですね。