10銭札デザインについて徹底解説!十銭紙幣に描かれた鳩や鳥、人物、建物とは
明治から昭和にかけての日本歴史が刻まれたデザインは、コレクターの中でも人気のある紙幣です。
この記事では、10銭札のデザインを通して、その魅力や価値に迫ります。
デザインに興味がある人はもちろん、手元に10銭札を持っている方も最後まで読んでみてください。
目次
日本紙幣デザイン史における10銭札とは
10銭札は、日本の紙幣デザイン史において重要な位置を占めています。
明治時代から昭和初期にかけて発行された10銭札は、日本の近代化と経済発展を反映する貴重な歴史的資料です。
10銭札の紙幣のデザインは、当時の社会情勢や文化的背景を色濃く反映しています。
10銭札のデザインの変遷は、日本の印刷技術の発展も物語っています。時代とともに、より精密で複雑なデザインが可能になり、偽造防止技術も進化していきました。
10銭札は日本の紙幣デザイン史を語る上で欠かせない存在です。
10銭札に描かれたデザイン要素
10銭札には、様々な興味深いデザイン要素が採用されています。
建物、鳥、文字、花など、それぞれの要素が時代背景や発行目的を反映しています。ちなみに、10銭札には人物が登場しません。
以下、デザインについて詳しく見ていきましょう。
建物
10銭札に描かれた建物は以下の2つ。
- 八紘一宇塔:1944年~1953年(昭和19年~28年)発行のい号券
- 国会議事堂:1947年~1953年(昭和22年~28年)発行のA号券
八紘一宇塔
八紘一宇塔は、10銭札のデザインで知られる歴史的建造物です。
ここにテキスト1940年、皇紀2600年を記念して宮崎県に建設されました。正式名称は「八紘之基柱」(あめつちのもとはしら)です。
高さ約36メートルの塔には、「八紘一宇」(全世界を一つの家とする)の文字が刻まれていました。戦後、GHQの命令でこの文字は削られ、「平和の塔」に改称されましたが、後に復元されています。
この塔は、日本の近代史を象徴する存在として、また10銭札のデザインモチーフとして、重要な文化的価値を持っています。建設当時の思想や戦後の変遷を物語る貴重な歴史的遺産となっています。
国会議事堂
国会議事堂は民主主義の象徴として、鳩10銭札とも呼ばれるA号10銭の裏面に描かれました。
戦後の混乱の中発行されました。
鳥
10銭札に描かれた鳥、特に鳩は、重要なデザインの一つです。
1947年(昭和22年)から1953年(昭和27年)にかけて発行された「A号10銭券」は、戦後の混乱期を象徴する紙幣です。その表面デザインには、平和の象徴として知られる鳩が採用されました。
紙幣の右側には、2羽の鳩が優雅に飛んでいる姿が描かれています。
この図案は、戦争の惨禍を経験した日本が、平和な未来へ向かって飛び立つ願いを表現しているとも解釈できます。
当時の社会情勢や人々の希望を反映したデザインは、日本の貨幣史上でA号10銭券を特別な存在にしています。戦後復興期の日本の姿を今に伝える、貴重な歴史的資料となっているのです。
文字
どの10銭札にも「拾錢」という漢字と「10」という算用数字が描かれています。漢字の字体は旧字体で、右から読む右横書きが採用されています。
先述のA号10銭券は、日本の貨幣の歴史上、旧字体かつ右横書きで文字が描かれた最後の紙幣です。
花
10銭札の花のデザインで特徴的なものは「菊花」です。どの10銭札にも菊の花が描かれており、日本の紙幣の象徴でした。
日本文化において、菊は特別な地位を占めています。
古くより美の象徴とされ、日本人の心に深く根付いてきました。皇室との関わりも深く、「菊の御紋」として皇室の公式紋章に採用されています。
つまり、長らく天皇制としてきた日本の歴史を象徴する菊を紙幣デザインに採用していたのですね。
A号10銭券を最後に、菊花の姿は紙幣から姿を消しました。
他にも、い号券には桜花型の彩紋があり、紙幣のデザインを華やかなものにしています。
10銭札と他の紙幣デザインとの比較
種類は少なく、歴史も短い10銭札ですが、デザインには深い歴史があります。
当時の他の紙幣や現在の紙幣、海外の紙幣など、様々な紙幣のデザインと比べてみましょう。
当時の他紙幣とのデザインの違い
4種類の10銭札を、その当時にあった他の紙幣のデザインと比べてみましょう。
- 明治通宝10銭札
- 大正小額紙幣10銭札
- い10銭券
- A号10銭券
明治通宝10銭札
明治通宝は100円、50円、10円、5円、2円、1円、半円、20銭、10銭の9種類がありました。
どれも鳳凰と龍が描かれています。
他は色味と描かれている額面の数字が違う程度で、デザインはほとんど同じです。
大正小額紙幣10銭札
大正小額紙幣は、銀貨の代替として登場した特徴的な紙幣です。
この紙幣には、10銭、20銭、50銭の3種類の額面が存在しました。
3種類の紙幣は共通の図案を採用しています。しかし、その発行期間はそれぞれ異なっていました。
紙幣の特徴として、表面には発行年が明記されています。この年号表記により、各紙幣の発行時期が分かるようになっています。
い10銭券
い号券シリーズは、その多様性と特徴的なデザインで注目に値します。
このシリーズは、百円、十円、五円、一円、十銭、五銭の6種類から構成されています。
特徴的なのは、十銭券を除く各紙幣に描かれた歴史上の人物です。
- 百円札:聖徳太子
- 十円札:和気清麻呂
- 五円札:菅原道真
- 一円札:武内宿禰
- 五銭札:楠木正成
発行には至らなかったものの、千円券には日本武尊、五百円券には武内宿禰が描かれる予定だったものもあります。
建物のみが描かれた十銭券と大きく異なるのが特徴です。
A号10銭券
A号券シリーズは、新円切替後初の日本銀行券として発行された6種類の紙幣です。ろ号券とい号券の後継として登場し、それぞれ独特のデザインを特徴としています。
6種類の紙幣には、それぞれ以下のデザインが描かれています。
- A百円券:聖徳太子
- A十円券:国会議事堂と鳳凰
- A五円券:彩紋
- A一円券:二宮尊徳
- A十銭券:鳩
- A五銭券:梅
この時期はGHQの指示やインフレにより、デザインの制約や発行に至らなかった紙幣が多いことも特徴です。
現在の紙幣とのデザインの違い
現在発行されている紙幣は一万円、五千円、二千円、千円の4種類です。
大きさや材質、ホログラムや透かしなどの偽造防止技術、鮮やかで多様な色使いと、10銭札とは多くの点で違います。
デザインについても、肖像画が大きく描かれたり、英語の表記があったり、旧字体を使用していなかったりと、当時とはまったく異なるデザインです。
海外の同時代紙幣との違い
海外の同時代紙幣と比べると、日本の10銭札には独特の特徴が見られます。
ヨーロッパの紙幣は芸術性が高く、アメリカの紙幣は古くから人物が採用されていました。他のアジア諸国では国家のシンボルや文化的モチーフを採用する傾向が見られます。
欧米の紙幣が主に著名人の肖像画を中心に据えているのに対し、日本の10銭札は建築物や鳥などのシンボリックな図案を採用しています。特に鳩10銭札は、戦後の平和への願いを表現しており、当時の日本の社会状況を反映しています。
10銭札のデザインと価値の関係
10銭札のデザインは、その価値にも大きく影響しています。
比較的高額での買取がされているのは以下の10銭札です。
- 明治通宝10銭札の美品
- 大正6年発行の大正小額紙幣10銭札
デザインの希少性だけではなく、保存状態も価値を左右するポイントです。未使用品や特殊なエラーのある10銭札は、コレクター間で高値で取引されることがあります。
10銭札のデザインは単なる見た目の問題ではなく、経済的価値を決定する重要な要素にもなっているのです。
10銭札デザインの魅力と価値
10銭札のデザインには、日本の歴史や文化が込められています。
10銭札のデザインは、日本の印刷技術や芸術性の高さを示す証でもあります。精密な模様や繊細な色使いは、当時の技術力の高さを物語っています。
歴史的、文化的、芸術的価値を持つ10銭札は、現代においても高い評価を受けています。特に希少なデザインや保存状態の良いものは、コレクターから高く評価されています。
もし、あなたの手元に10銭札があれば、それは単なる古い紙幣ではなく、日本の歴史と文化を語る貴重な資料かもしれません。
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