江戸時代を語る小判!安政小判と万延小判の歴史と現在の価値

江戸時代を語る小判!安政小判と万延小判の歴史と現在の価値
安政小判と万延小判は江戸時代に使われていた通貨です。この記事では、安政小判と万延小判のデザインや発行の歴史、製造方法、金の含有量などを解説します。

現在の価値相場も紹介しているので、江戸時代の通貨に興味のある人はもちろん、現在小判を持っているという人も最後まで読んでみてくださいね。

そもそも江戸時代の小判ってどんなもの?

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小判は江戸時代に使われていた通貨です。
楕円形の薄い金板に、その時代に合わせた文字や模様が描かれています。これらの金貨は、徳川幕府が発行し、経済の中心的役割を果たしました。

小判の特徴として、高い純度の金を使用していることが挙げられます。また、時代によって大きさや重さ、金の含有量が変化しました。

江戸時代を通じて、様々な種類の小判が発行されました。その中でも安政小判(写真左)と万延小判(写真右)は特に注目されています。

安政小判の特徴や歴史

安政小判は、江戸時代後期に発行された金貨です。

安政小判について詳しく見ていきましょう。

安政小判のデザイン

安政小判は、長さ約55.6mm、幅約29.4mm、重さ約8.98gの楕円形をしています。

安政小判、表
安政小判、裏
  • サイズ:約55.6×29.4mm
  • 重さ:8.98g
  • 品位::金570、銀430

表面には、ござ目や扇枠の桐紋があります。
これは、江戸時代の他の小判と同じです。他に描かれているものは「一両」の文字や光次の極印です。

裏面の中央部分には、光次の花押が打刻されています。
左下には、検品の証である験極印が刻まれています。この験極印は2つあり、小判師によるものと吹所によるものです。

安政小判の特徴的な点は、裏面の右上に「正」の字があることです。これは、安政の「政」を簡略化したもので、時代を示す極印として使用されています。
この特徴から、安政小判は正字小判とも呼ばれることがあります。

安政小判の製造背景

安政小判は、1859年(安政6年)に発行されました。
この時期、日本は長年の鎖国政策を終え、開国したばかりでした。当時の通貨交換では、日本の一分銀3枚が1ドル銀貨に相当するとされていました。

日本と諸外国の金銀交換比率には大きな開きがありました。
日本では1:5だったのに対し、諸外国では1:15でした。この差を利用し、1ドル銀貨を一分銀に両替し、さらに小判に換えて海外に持ち出すと、利益が得られる状況になっていたのです。

結果として、日本の小判が大量に海外へ流出する事態が起こりました。
これに対処するため、幕府は新たな対策を講じました。金の品位はそのままに、1ドル銀貨の半分の量目となる安政小判を鋳造したと言われています。

安政小判は、海外への金流出を抑える効果を狙って発行が開始されたのです。

万延小判の特徴や歴史

万延小判は、安政小判の後継として発行された金貨です。従来の小判と比べると何が変わったのでしょうか。

万延小判について詳しく見ていきましょう。

万延小判のデザイン

万延小判は、長さ3.5㎝、幅約2.0㎝、重さ約3.3gです。
安政小判よりも小さく軽いのが特徴です。

万延小判、表
万延小判、裏
  • サイズ:約35×20㎜
  • 重さ:3.3g
  • 品位:金574、銀426

そのサイズから「雛小判」と呼ばれたり、江戸時代最後に製造された小判であることから、「新小判」とも呼ばれたりしています。

表面には、ここにテキストござ目と呼ばれる模様が刻まれています。
上下に扇枠の桐紋が配置され、その間には「一両」という額面を示す文字が見られます。金貨の鋳造責任者であった後藤光次の極印も、表面に打刻されている点が特徴的です。

裏面の中央には、後藤光次の花押が施されています。
左下に2つの験極印が刻まれていますが、時代を示す印は存在しません。この時代印の不在も、万延小判の独自の特徴となっているのです。

万延小判の製造背景

万延小判は、第14代将軍徳川家茂の政策により、1860年(万延元年)から流通が始まったとされています。

家茂は、開国直後の混乱した財政を立て直すため、公武合体を推進しようとした人物でした。また、文久の改革として知られる一連の人事・職制・諸制度の改革を行ったことでも有名です。

では、なぜ万延小判が作られたのでしょうか。

当時の日本と海外では、金銀比価に大きな開きがありました。
日本では1:5、海外では1:15だったのです。この差を利用し、外国から銀を持ち込み、日本で金に換えて持ち帰る外国人が増加しました。結果として、日本の金が国外に流出する事態を招いたと言われています。

国内の金不足に対処するため、幕府は新たな対策を講じました。
金の国外流出を防ぐ目的で、金の含有量を減らした万延小判を製造することになったのです。この政策は後に「万延貨幣改鋳」と呼ばれることになります。

安政小判と万延小判を比較

安政小判と万延小判を比較

安政小判と万延小判は、わずか数年の間に発行された金貨ですが、多くの点で大きく異なります。

以下、2つの製造方法や金の含有量、偽造対策などを比べて、その違いを詳しく見ていきましょう。

時代印で見分けられる

安政小判と万延小判の最も大きな違いであり、また一番簡単な見分け方は、時代印です。

多くの小判には、いつ作られたものなのかが分かる時代印が押されていますが、万延小判には時代印が見られませんが、安政小判には「安政の“正”」の字が時代印として押されています。なぜ「政」じゃなくて「正」の字かというと、画数が多いからより簡略化されたと聞いたことがあります。

安政小判と万延小判の最も大きな違いであり、また一番簡単な見分け方は、時代印

製造方法

安政小判と万延小判の製造方法には、基本的な違いはありません。
どちらも奉行所に隣接する「小判所」で製造され、金と銀の合金を溶かし、型に流し込んで成形する方法が用いられました。

小判の製造過程をご紹介します。

まず、金を溶かしてのべ板状にし、こののべ板をハサミで一枚分の重さに切り分けます。
切り分けた金片は、つちで叩いて小判の形に成形されます。

成形後は、表面に「茣蓙目(ござめ)」という模様を付ける段階です。

模様をつけたら表面に薬品を塗り、熱を加える「色揚げ(いろあげ)」という工程を行います。
この作業により、より美しい「黄金色」が生み出されるのです。

これらの工程を経て、小判は完成に至ります。
各段階で細かな注意が払われ、高品質の小判が生み出されていたのです。

金の含有量

安政小判の金の含有量に関する品位規定は56.77%で、残りは銀43.23%で構成されています。
万延小判の金含有量は57.4%で、残りは銀42.6%で構成されています。

若干の差はありますが、どちらもほぼ57%の含有量です。現在の金の価格からすると、安政小判と万延小判のどちらも高い金含有量に見えますね。

しかし、江戸幕府最初の小判である慶長小判と比べるとかなり減っているのです。
慶長小判は87%の金含有量を誇っていました。それが、幕府の財政状況が厳しくなり、改鋳によって57%まで下げられたのです。

この改鋳によって、偽造の増加や貨幣価値の下落などの問題が発生してしまいました。

偽造対策

江戸時代、小判の偽造は深刻な問題でした。

安政5年(1858年)、江戸の業平橋近くにある料理茶屋「在吾庵」で、ある事件が発覚しました。これは、銀貨鋳造を担当していた銀座の複数の関係者による贋金事件でした。

偽造された銀貨の額は、なんと8000両に上りました。
当時、金貨・銀貨の偽造は重大な犯罪とされていました。そのため、この事件の関与者たちは厳しい処罰を受けることになったのです。

江戸幕府は、貨幣偽造に対して断固たる姿勢を示しました。この事件の犯人たちは、最終的に打ち首の刑に処されました。
この事件は、当時の貨幣制度が整っていなかったことと、それに対する幕府の厳しい対応を示す出来事となったのです。

安政小判と万延小判の現在の価値

安政小判と万延小判の現在の価値

江戸時代に発行された安政小判と万延小判は、現代においても高い価値を持っています。

これらの小判は、歴史的価値だけでなく、金そのものの価値も兼ね備えています。

安政小判の価値

安政小判の現在の価値は、状態や希少性によって大きく異なります。

ヤフオクメルカリなどのオンラインマーケットでは、数千円から数万円と幅広く取引されています。
偽物かどうかはわからないものもあるため、数千円のものはレプリカや当時の偽造小判かもしれません。

専門店では、鑑定済みの安政小判がより高額で販売されています。
50万円前後が多いようですが、状態の良い物であれば、100万円以上の価格がつくこともあります。

万延小判の価値

万延小判の現在の価値は、安政小判と比べてやや低めです。

ヤフオクやメルカリなどのオンラインマーケットでは、数千円から数万円で売られています。安政小判と同じで、希少性や付属品の有無によって価格が上下しています。

専門店での取引では、7万円から30万円程度で販売されていることが多いようです。
ただし、特に状態の良いものや歴史的に重要な背景を持つものは、より高額になる可能性もあります。

安政・万延小判から見る江戸時代の歴史

安政・万延小判から見る江戸時代の歴史

安政小判と万延小判は、江戸時代後期の経済状況や社会の変化を反映しています。
安政小判と万延小判の発行の背景から、江戸時代の経済状況や歴史的な背景がわかります。

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