

中国と日本のそれぞれで多様な額面、様々な場所で発行されたため不定。
買取実績価格 42,000円(税込)
中国と日本のそれぞれで多様な額面、様々な場所で発行されたため不定。
目次
洪武通宝は、中国の明王朝の最初の皇帝「朱元璋」が、建国後の1368年(洪武元年)に発行した貨幣です。
これは、明王朝の正式な銅銭(青銅製の通貨)として使われ、のちの中国貨幣制度に大きな影響を与えました。
読み方は「こうぶつうほう」です。
洪武通宝は洪武帝(朱元璋)の時代に発行された通貨という意味です。
洪武の「洪」は壮大さ、「武」は軍事的力を象徴する文字で、「大いなる武力による新たな時代の創始」という意味が込められていたとされています。
朱元璋は「元宝」という名称を決して使おうとはしませんでした。
これは、前の時代の国「元」と同じ字を使いたくなかったからです。
そのため、明の時代につくられたお金には、すべて「通宝」という名称が使われるようになりました。
項目 | 内容 |
---|---|
発行時期 | 1368年(洪武元年)~洪武年間末期 |
発行者 | 明の初代皇帝「朱元璋」 |
材質 | 主に銅(青銅)、一部に鉄銭もあり |
デザイン | 表に「洪武通宝」の銘文。裏に鋳造所や額面などの銘がある場合もある |
洪武通宝の通貨制度は、朱元璋が元時代の末期の即位前に鋳造した「大中通宝」を継承しており、「五等銭」と呼ばれる5つの額面で発行されました。
額面 | 重さ |
---|---|
小平 | 1銭 |
当二(折二) | 2銭 |
当三(折三) | 3銭 |
当五(折五) | 5銭 |
当十(折十) | 1両 |
重さの規定も設けられており、小平銭は1銭、当二銭は2銭、当三銭は3銭、当五銭は5銭、当十銭は1両と定められました。
洪武26年には、1文の重さが1銭2分に引き上げられ、他の4つの額面も小平銭の重さに応じて変更されています。
鋳造に用いられる銅の品質については、「鋳銭規則」において、新しく生成した銅(生銅)の使用が規定されていました。
洪武《铸钱则例》规定,铸钱应用生铜。
中央政府门户网站(中国政府公式サイト)
ですが、当時の銅は希少であったため、旧貨幣などをリサイクルした銅が広く用いられました。
このため、銅の質が安定せず純度も均一ではないため、「洪武通宝」は見た目にもばらつきが生じています。
洪武通宝の一般的な大きさ(直径)は下記とおりです。
※上記サイズに当てはまらないケースも存在します。
明朝初期は、銅銭の鋳造と並行して紙幣「大明宝鈔」の発行と流通を促進しました。
紙幣の流通を推進するため、明朝は銅銭の鋳造と流通を厳しく管理しました。
このような厳しい銅銭の規制は、明朝前期に2つの結果をもたらしました。
明朝初代皇帝・洪武帝から第13代皇帝・隆慶帝(明穆宗)の時期は、紙幣政策が重視されたために銅銭の鋳造が厳しく制限され、鋳造量が限られていました。
洪武通宝は、裏面の銘文(刻印)によって大きく4つの種類に分類されます。
中国湖南省常德市の中国収集家協会会員である周新国氏による書籍「武陵蔵珍」によると、洪武通宝には4つの分類で61種類が存在し、現在確認できるものは58種類とされています。
洪武通宝裏面の銘文例
下の「福」と上の「浙」
日本では、16世紀から多くの明朝の古銭(明銭)が「私鋳銭※」として流通し始めました。
特に、九州の薩摩藩にある加治木村(現在の鹿児島県姶良市加治木町)では、16世紀後半から17世紀初頭にかけて大量の古銭が生産されました。
薩摩藩は琉球王国との貿易が非常に活発であったことで、明朝の古銭を模倣した硬貨が多く作られましたが、その1つが「洪武通宝」でした。
加治木で鋳造されたことを示す印として、裏側に「加」「治」「木」のいずれかの文字が銘文されていますが、そのほとんどは「治」です。
穴の右側に縦書きで一銭
このように鋳造された局や時期によって、様々な様式の洪武通宝が存在します。
同じ鋳造局のものでも、直径や重さが違うこともあり、五等銭の各額面の鋳造量や現存量も大きく異なります。
洪武通宝は、その歴史的価値と多様性から、コレクターの間で人気があります。
特に希少性の高いものは高値で取引されます。
例えば、最も一般的な「楷書 小平 光背」は比較的手に入りやすい一方で、
「楷書 小平 背『京』」や「楷書 小平 背『済』」のような特定の鋳造局名が記されたものは、非常に高い希少価値があります。
価格に影響する要因をご紹介します。
実際の取引価格は流通量や状態、需要によって変動する可能性があります。
「洪武通宝」の価値は、その種類や希少性によって大きく異なります。
貨幣の種類ごとの参考となる価格をご紹介します。
種類 | 参考価格 |
---|---|
楷書小平光背 | 80円 |
楷書折二光背 | 26,600円 |
楷書折三光背 | 26,600円 |
楷書折五光背 | 22,500円 |
※小平銭の光背はバージョンが非常に多い
種類 | 参考価格 |
---|---|
楷書小平背「一銭」 | 1,000円 |
楷書折二背「二銭」 | 2,000円 |
楷書折三背「三銭」 | 4,100円 |
楷書折五背「五銭」 | 22,500円 |
楷書折十背「十一两」 | 1,200円 |
種類 | 参考価格 | |
---|---|---|
小平銭 | 楷書小平背「北平」 | 1,200円 |
楷書小平背「浙」 | 1,000円 | |
楷書小平背「桂」 | 200円 | |
楷書小平背「福」 | 200円 | |
楷書小平背「豫」 | 1,600円 | |
楷書小平背「京」 | 102,400円(希少) | |
楷書小平背「鄂」 | 92,000円(希少) | |
楷書小平背「济」 | 143,000円(希少) | |
楷書小平背「广」 | 1,200円(希少) | |
楷書小平背「桂一」 | 6,500円 | |
折二銭 | 楷書折二背「北平」 | 16,400円 |
楷書折二背「浙」 | 2,000円 | |
楷書折二背「桂二」 | 8,200円 | |
楷書折二背「二福」 | 4,100円 | |
楷書折二背「豫」 | 3,100円 | |
楷書折二背「京」 | 205,000円(非常に稀少) | |
楷書折二背「济」 | 113,000円(希少) | |
楷書折二背「广二」 | 113,000円(希少) | |
折三銭 | 楷書折三背「北平」 | 20,500円 |
楷書折三背「浙」 | 2,500円 | |
楷書折三背「三福」 | 20,500円 | |
楷書折三背「豫」 | 3,000円 | |
楷書折三背「京」 | 82,000円(希少) | |
楷書折三背「鄂」 | 113,000円(希少) | |
楷書折三背「济」 | 82,000円(希少) | |
楷書折三背「桂三」 | 113,000円(非常に稀少) | |
楷書折三背「广三」 | 123,000円(非常に稀少) | |
折五銭 | 楷書折五背「北平」 | 24,500円 |
楷書折五背「浙」 | 6,150円 | |
楷書折五背「五福」 | 8,200円 | |
楷書折五背「豫」 | 5,700円 | |
楷書折五背「京」 | 82,000円(希少) | |
楷書折五背「鄂」 | 123,000円(希少) | |
楷書折五背「济」 | 113,000円(希少) | |
楷書折五背「桂五」 | 113,000円(非常に稀少) | |
楷書折五背「广五」 | 113,000円(非常に稀少) | |
折十銭 | 楷書折十背「北平十」 | 4,500円 |
楷書折十背「京十」 | 2,500円 | |
楷書折十背「济十」 | 4,500円 | |
楷書折十背「鄂十」 | 5,700円 | |
楷書折十背「十豫」 | 3,000円 | |
楷書折十背「桂十」 | 10,000円 | |
楷書折十背「十福」 | 3,000円 | |
楷書折十背「十浙」 | 3,000円 | |
楷書折十背「十广」 | 45,000円(稀少) |
種類 | 参考価格 |
---|---|
楷書折三背「三」 | 82,000円(稀少) |
楷書折五背「五」 | 57,000円(稀少) |
楷書折十背「十」 | 7,000円 |
実際にオークションなどで取引された事例を紹介します。
取引時期 | 種類 | 取引額(当時のレートで計算) |
---|---|---|
2012年5月 | 洪武通宝 折二 背上済 | 277万2,000円 |
洪武通宝は、明朝の経済と貨幣制度の変遷を物語る貴重な歴史的遺物です。
朱元璋によって定められた五等銭の制度、紙幣との併用、そして厳しい銅銭統制の歴史は、明朝初期の複雑な時代背景を今に伝えています。
多様な洪武通宝は単なる貨幣ではなく、当時の政治・経済政策の紆余曲折を反映した重要な存在であるといえます。
この多様性がもたらすと希少価値は、現代のコレクターにとっても魅力的な収集対象であり続けています。
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