【外国コインの魅力】グルデン金貨の歴史と楽しいエピソード
ヨーロッパのコインの中でも特に人気の高いグルデン金貨。
グルデン金貨の人気を支えている理由は、もちろんコインそのものの美しさがあげられます。それだけではありません。グルデン金貨を発行したオランダの繁栄が、その価値を高めたという説もあります。
グルデン金貨はなぜ人気があるのか、その魅力や特徴について、歴史とともに解説します。
目次
グルデン金貨とは?
グルデン金貨とは、オランダが発行していたコインのひとつ。
とくにオランダの君主の肖像画がデザインされた金貨は人気が高く、女王が多いオランダらしく優美なイメージが印象的です。
現代のオランダ国王は男性ですが、その前には3代の女王が続きました。
▼写真は第7代オランダ国王「ウィレム=アレクサンダー」
19世紀の終わりから20世紀半ばまで君臨したウィルヘルミナは、10歳で即位後に世界大戦を経て、オランダ国民の心に寄り添った女王として人気があります。
絶大な人気を誇るウィルヘルミナ女王のグルデン金貨を中心に、オランダのグルデン金貨の歴史や魅力をお伝えします。
まずはウィルヘルミナ女王10グルデン金貨を知ろう
半世紀以上にわたりオランダに君臨したウィルヘルミナ女王。あどけない少女時代から貫禄のある年代まで、肖像画が異なるグルデン金貨が存在します。
特に人気のあるウィルヘルミナ女王がデザインされた10グルデン金貨を解説します。
ウィルヘルミナ女王10グルデン金貨のサイズ
1892~1897年に発行された10グルデン金貨には、ウィルヘルミナ女王が描かれています。
ウィルヘルミナ女王は、1880年8月31日に生まれ、1890年から1948年に退位するまでオランダの女王を務めました。彼女はオランダの歴史上、最も長く君臨した君主で、その統治期間は約58年にわたります。
彼女の治世中には、第一次世界大戦、1933年のオランダの経済危機、そして第二次世界大戦などの重要な出来事がありました。1940年のドイツ軍によるオランダ侵攻時、ウィルヘルミナはイギリスへ避難し、オランダ抵抗運動の象徴となりました。彼女はラジオ放送を通じて国民に語りかけ、占領下でも希望と強さを持ち続けるよう呼びかけました。
そんなウィルヘルミナ女王の若い頃の姿がデザインされた10グルデン金貨の仕様は下記の通りです。
品位 |
K21.6 |
---|---|
重さ |
6.729g |
直径 |
22.5mm |
デザイナー | W.J. Schammer、J.C. Wienecke |
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グルデン金貨にデザインされた女王の肖像画
ウィルヘルミナ女王のグルデン金貨は、年代によって肖像画が異なる4種類が存在するといわれています。
1892年、即位後間もないローティーン時代
1898年、若々しさが際立つ18歳前後
1912年、厳しい世界情勢のなか謹厳な表情を見せる30代
1925年、戦後の世界で貫禄を見せる熟年の時代
王族としての気品をもちながらあどけない表情を見せる1890年代のグルデン金貨、オランダの自由と解放のために尽くした20世紀のグルデン金貨など、どのコインを手にとっても、激動の時代を生きた女王の偉大さが伝わります。
女王の肖像と対になっているのは、オランダ王国の国章。剣と矢を持つライオンが、オランダのシンボルになっています。
グルデン金貨に彫られた文字
グルデン金貨の女王を囲む文字は、
KONINGIN WILHELMINA · GOD ZIJ MET ONS(女王ウィルヘルミナ・神は我らとともにあり)
と刻まれています。
裏面の紋章の周りには、
KONINGRIJK DER NEDERLANDEN(オランダ王国)
の文字が見えます。
日本での正称は「オランダ王国」ですが、オランダ語の正式名称は「Koninkrijk der Nederlanden(ネーデルランド王国)」。「低地の国」の意味で、古代ローマ時代から、オランダがある地域は「低地ゲルマニア」と呼ばれていました。その名残が感じられる文字です。
知っておこう!グルデン金貨の歴史
「グルデン」という響きそのものに中世的な要素を感じる方も多いかもしれません。
グルデン金貨にはどんな歴史があるのでしょうか。
わかりやすく解説します。
起源はイタリアにあり?グルデン金貨の誕生秘話
グルデンの貨幣は、英語名の「ギルダー」のほかに「フローリン」と呼ばれることもあります。
「フローリン」は13世紀、イタリアのフィレンツェで発行が始まったコインです。銀行業や商業で栄えたフィレンツェのフローリン金貨は、品質やデザインが秀逸でした。当時のヨーロッパ各国でフィレンツェのフローリン金貨が流通し、国際通貨として普及していたのです。
グルデンの別称「Hfl」は「オランダのフローリン(Hollands florijn)」の略。つまりグルデン金貨は、イタリアに起源をもつコインなのです。
オランダの複雑な歴史とグルデン金貨
現在オランダとなっているエリアは、かつてはローマ帝国の一部であり、中世にはカロリング帝国や神聖ローマ帝国に組み入れられていました。
この地域における最初のグルデン貨幣は、1579年に7州のユトレヒト条約が締結されて以後に発行されました。1648年にネーデルラント連邦共和国の独立が認められ、交易で栄えていたオランダのグルデン金貨は、国際貨幣として評価を高めていきました。
東インド会社とグルデン金貨
1602年に設立されたオランダ東インド会社は、近代における多国籍企業の先駆けとなりました。1799年まで継続した東インド会社によって、オランダのグルデン金貨は世界的な評価を高めました。世界経済にも影響を与えたグルデン金貨は、オランダ総督の汚職などが発覚した18世紀後半に暴落した歴史ももっています。
東インド会社の興亡とともに歴史を刻んだグルデン金貨は、世界史のなかでも重要な貨幣として位置づけられています。
グルデン金貨にまつわる楽しいエピソードを知ろう!
オランダで発行されるグルデン金貨は、豊かな経済事情を反映した美しさやデザインが魅力。そのグルデン金貨にまつわる楽しいエピソードをご紹介します。
几帳面で先見性があるオランダ人の気質
古来、オランダのある地域はネーデルランド地方の一部とみなされており、民族国家的な形になるのは14世紀末、ブルゴーニュ家の統治下の時代であったといわれています。ブルゴーニュ家のフィリップ善良公によって集権化が進み、オランダという国の基礎ができました。
一般的にオランダ人は、几帳面で現実性に富み、ユーモアを好むといわれています。ヨーロッパの小国でありながら歴史の表舞台で影響力をふるった先見性や計画性は、現在も健在。綿密な都市計画からもその性質がうかがえます。
エラスムスやホイジンガといった哲学者や歴史家を輩出する一方、高名なフランドル派の画家も多く、美的感覚がグルデン金貨のデザインにも発揮されています。
日本の皇室とも縁が深いオランダ王室は女性が大活躍!
日本の皇室とも縁が深いことで知られるオランダ王室。開明的なオランダの王室は、女性たちが大活躍をしています。
ウィルヘルミナ女王は戦中戦後のオランダ国民に寄り添った女性君主でしたが、彼女の娘ユリアナ女王、さらにその娘ベアトリクス女王も、自転車で町に現れるなど気さくなお人柄で知られています。ごく自然に国民と語り合う姿が日常的に見られます。
ユリアナ女王は4人の娘を持ちましたが、ベアトリクス女王の長男で現在のオランダ王ウィレム・アレクサンダーにも3人の王女がいます。つまり時代の君主も女性。
女性たちによって支えられているオランダ王室なのです。